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【離檀の手紙・例文集】トラブル回避の決定版!理由別書き方・送るタイミング・マナーを完全網羅

お寺に電話をするのが怖い…高額な離檀料を請求されたらどうしよう…

お墓の継承や引っ越しに伴い、これまでお世話になったお寺から離れる「離檀(りだん)」を検討する際、このような不安を抱えている方は非常に多くいらっしゃいます。特に、ニュースなどで「離檀料トラブル」を目にすると、自分から話を切り出すことに二の足を踏んでしまうのは当然のことです。

しかし、その不安を放置して曖昧な対応をしてしまうと、かえって住職の心証を損ね、本来払わなくて済んだはずの費用や精神的な負担を招くことになりかねません。

実は、数百万円規模のトラブルを防ぎ、円満な離檀を実現するための最大の防御策は、法律知識ではなく「一通の丁寧な手紙」にあります。

この記事では、住職の心を解きほぐし、スムーズな話し合いのきっかけを作るための「離檀の手紙」について、状況別のそのまま使える例文から、封筒の選び方、投函後のフォローに至るまでを徹底的に解説します。離檀は「お別れ」ではなく、ご先祖様を新しい環境で供養するための「前向きなステップ」です。この記事を読み終える頃には、自信を持ってペンを執ることができるようになっているはずです。

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なぜ「離檀の手紙」がトラブル回避の鍵になるのか

離檀トラブルの多くは、実は「手順」と「伝え方」のミスから生じています。なぜ、いきなり電話や訪問をするのではなく、まず手紙を送ることが推奨されるのか。その背景には、お寺側の心理とコミュニケーションの構造的な理由があります。

突然の「離檀届」は宣戦布告?お寺側の心理を知る

利用者側にとって、墓じまいや改葬は「行政手続き」や「家の整理」の一環と捉えられがちです。そのため、役所に書類を提出するような感覚で、いきなり事務的な「離檀届」を送りつけたり、電話で「来月でお墓を撤去します」と通告してしまったりするケースが後を絶ちません。

しかし、お寺側(住職)の心理としては、これは「突然の絶縁宣言」あるいは「宣戦布告」と受け取られる可能性が極めて高いのです。

日本の伝統的な寺院と檀家の関係は、単なる管理契約ではなく、数世代にわたる精神的な結びつきの上に成り立っています。住職にとって、檀家が離れることは経済的な損失であると同時に、「自分の代でご縁が切れてしまった」「供養に対する指導力が否定された」という精神的な痛手でもあります。

そこに、礼儀を欠いた事務的な通告が届けば、住職も人間ですから、「今まで拝んでやったのに礼儀知らずだ」という感情的な反発を招きます。これが、本来は「お気持ち」であるはずの離檀料に対して、懲罰的な意味合いを含んだ高額請求がなされる一因となるのです。

「相談」というスタンスが円満解決の鉄則

手紙を送る最大の目的は、「離檀します」という決定事項を伝えることではありません。「事情があり、お墓の今後について悩んでいるので、相談に乗ってください」というアポイントメントを取ることが本質的な役割です。

人は「決定されたこと」を事後報告されると反発しますが、「相談」されると「力になってやりたい」「話を聞こう」という心理が働きます。

手紙の中で、「高齢で管理が難しい」「跡継ぎがおらず、無縁仏にするのが怖い」といった切実な事情(ストーリー)を事前に伝えておくことで、住職に「それなら仕方がない」という納得感(心の準備)を持ってもらうことができます。この「相談」というスタンスこそが、円満解決への鉄則です。

電話・訪問前の「ワンクッション」としての効能

口下手な方や、威厳のある住職を前にすると緊張してしまう方にとって、手紙は最強のコミュニケーションツールとなります。

電話や対面では、言葉に詰まってしまったり、相手の勢いに押されて「わかりました」と意図しない約束をしてしまったりするリスクがあります。また、感情的になって売り言葉に買い言葉のような状態になることも避けなければなりません。

手紙であれば、推敲を重ねて、失礼のない言葉を選び抜き、こちらの事情を論理的かつ情緒的に伝えることができます。また、書面として残るため、「言った言わない」のトラブルを防ぐ証拠としての機能も果たします。

電話や訪問という直接的な接触の前に、手紙でワンクッション置くことは、相手の衝撃を和らげると同時に、自分自身の精神的な安定を守るための「緩衝材」となるのです。

書く前の準備:絶対に押さえるべき事前マナー

手紙を書き始める前に、いくつか確認・準備しておくべき事項があります。これらを飛ばして手紙を出すと、手紙の内容が素晴らしくても、外堀が埋まっていないために失敗する可能性があります。

まずは電話を一本入れるのが礼儀

「電話が怖いから手紙にする」という場合でも、完全に無言で手紙を送りつけるのはマナー違反と取られることがあります。特に、普段あまり付き合いのないお寺の場合、不審な手紙と思われる可能性もあります。

手紙を投函する直前、あるいは投函した直後に、以下のような短い電話を一本入れておくと非常に丁寧です。

【電話スクリプト例】

「いつもお世話になっております、檀家の〇〇でございます。
実は、お墓の今後のことでご住職にご相談したいことがあり、
本日、手紙を出させていただきました。
込み入った内容ですので、まずは書面にて失礼いたします。
お手すきの際にご一読いただけますでしょうか。」

この一本の電話があるだけで、住職は「何か相談事が来るのだな」と身構えることができ、手紙を受け取った時の印象が劇的に良くなります。

現在の契約内容(墓地使用規則)の確認

手紙を書く前に、自宅にある「墓地使用許可証」や「契約書」、「墓地管理規則」などを必ず確認してください。

これらには、墓地を返還する際の条件が記載されています。

確認ポイント

  • 離檀料の規定はあるか: 稀に「離檀時は〇〇万円を納める」と明記されている場合があります。この場合、法的な支払い義務が生じる可能性があります。
  • 指定石材店の有無: お墓の撤去工事を行う石材店が指定されているかどうかも重要です。

これらの情報を知らずに「費用はかけられません」「知人の石材店に頼みます」と手紙に書いてしまうと、契約違反を指摘され、立場が弱くなってしまいます。手元に見当たらない場合は、手紙を送った後の面談時に確認することになりますが、リスク管理として可能な限り探しておきましょう。

親族間の合意形成を済ませておく

お寺とのトラブル以上に多いのが、親族間のトラブルです。「本家の墓を勝手にじまいした」「自分は聞いていない」といったクレームが後から入ると、お寺も板挟みになり、手続きがストップしてしまいます。

手紙の中で「親族一同で話し合った結果」と書けるように、事前に祭祀承継者(お墓の名義人)だけでなく、関係する親族全員の同意を得ておくことが不可欠です。

「誰が」「どこに」「どのように」改葬するのか、費用は誰が負担するのか。これらが固まっていない段階で住職に相談するのは時期尚早です。まずは身内の足並みを揃えましょう。

【状況・理由別】離檀の手紙・挨拶状 例文テンプレート

ここからは、具体的なシチュエーションごとの例文をご紹介します。

使用上の注意

  • [ ] で囲まれた部分は、ご自身の状況に合わせて書き換えてください。
  • 時候の挨拶は、後述する「時候の挨拶リスト」から、手紙を送る月に合ったものを選んで挿入してください。
  • あくまで「下書き」として利用し、最終的には手書き(縦書き)で清書することを強く推奨します。

【基本型】遠方への引っ越し・改葬(最も無難)

物理的な距離を理由にするパターンです。誰のせいでもない「地理的な事情」であるため、住職も引き止めにくく、最も角が立たない標準的な文面です。

件名:改葬のご相談

拝啓

[時候の挨拶]

[〇〇寺]ご住職様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
平素は、[〇〇家]の先祖代々の供養におきまして、ひとかたならぬご厚情を賜り、心より感謝申し上げます。

さて、本日は、当家の先祖のお墓の今後につきまして、ご住職にご相談申し上げたく、不躾ながらお手紙を差し上げました。

私ども一家は、現在[〇〇県]に居住しておりますが、仕事と生活の基盤が完全にこちらへ移り、今後も[お寺のある地域]へ戻る見込みが立たない状況となっております。
これまでは、帰省の折にお墓参りをさせていただいておりましたが、私ども夫婦も齢を重ね、遠方まで足を運ぶことが年々体力的にも難しくなってまいりました。

このままでは、お墓の清掃や管理が行き届かず、ご先祖様に対しても、またお寺様に対しても、大変なご無礼をしてしまうのではないかと、親族一同で案じているところでございます。

先祖代々お守りいただいた墓所を離れることは、私どもといたしましても断腸の思いではございますが、将来無縁仏となってご迷惑をおかけすることは避けねばなりません。
つきましては、誠に勝手ながら、私の居住地近くへ遺骨を移し(改葬)、私どもの手で責任を持って供養を続けていくことも視野に入れ、ご住職のご指導を仰ぎたく存じます。

本来であれば、すぐにでも参上してお話しすべきところ、まずは書面にて失礼ながらご相談申し上げました。
近日中に、改めてお電話にてご都合をお伺いさせていただきます。

ご多忙の折、誠に恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具

令和[〇]年[〇]月[〇]日

[あなたの氏名]

[〇〇寺] ご住職様

【切実型】継承者不在・子供に負担をかけたくない

少子化や未婚化により、お墓を継ぐ人がいないケースです。「無縁仏にしたくない」という責任感を強調することで、誠意を伝えます。永代供養墓などへの「墓じまい」を前提とした文面です。

件名:お墓の継承に関するご相談

拝啓

[時候の挨拶]

[〇〇寺]ご住職様におかれましては、ご健勝にてお務めのこととお慶び申し上げます。
日頃は、亡き[父・母]の供養を通じ、温かいご指導をいただき厚く御礼申し上げます。

さて、本日は当家のお墓の将来につきまして、ご相談がありお手紙をしたためました。

実は、私たち夫婦には子供がおらず、[または「娘は嫁いでおり」]、私たちが亡くなった後、お墓を守る継承者が不在となってしまう見通しでございます。

「子供や孫に墓守の負担をかけたくない」という思いも強く、また何より、お寺様にご迷惑をおかけする「無縁仏」にしてしまうことだけは、何としても避けたいと考えております。

夫婦で話し合いました結果、私たちが元気なうちに墓じまいを行い、永代供養墓などへ改葬・整理をすることが、ご先祖様への最後の務めではないかと考えるに至りました。

長きにわたりお世話になったお寺様を離れることは大変心苦しいのですが、事情をご賢察いただき、今後の進め方についてご教示いただければ幸いです。

[以下、基本型と同様に面談の希望へ繋げる]

【相談型】経済的な理由(管理費が払えない)

経済的に困窮しており、護持会費(管理費)や今後のお布施が払えないことを理由にする場合です。ここで「お金がない」と正直かつ低姿勢に伝えておくことは、後の高額な離檀料請求に対する予防線になります。

件名:今後の供養に関するご相談

拝啓

[時候の挨拶]

(冒頭の挨拶・感謝は基本型と同様)

さて、この度は誠に申し上げにくいことではございますが、当家の経済的な事情により、今後これまで通りのお付き合いを続けていくことが困難な状況となりました。

実は、[自身の病気による長期療養 / 定年後の収入減少] 等により、家計が大変厳しく、毎年の管理費や法要のお布施を工面することさえままならない状態でございます。

ご先祖様を大切にしたい気持ちはやまやまでございますが、このままでは管理費を滞納し、お寺様にご迷惑をおかけしてしまうことは明白であり、断腸の思いで墓じまい(改葬)を検討せざるを得なくなりました。

誠に勝手なお願いで心苦しいのですが、経済的な負担の少ない合祀墓などへの改葬を許可していただけないでしょうか。

本来であれば、相応の御礼を尽くすべきところではございますが、このような逼迫した状況でございます。私どもの窮状をご賢察いただき、何卒ご慈悲を賜りますよう伏してお願い申し上げます。

[以下、基本型と同様に面談の希望へ繋げる]

【宗教型】改宗・宗旨替え(要注意)

「他の宗教を信じることになった」というのは、最もトラブルになりやすい理由です。住職の教義を否定するような表現は避け、「嫁ぎ先の宗教に合わせる」「家族の意向」など、自分ではどうしようもない理由にするのが無難です。

件名:改葬のお願い

(冒頭省略)

さて、この度は当家のお墓の改葬につきましてお願い申し上げます。

私事ではございますが、この度、[長男の結婚 / 娘の嫁ぎ先との兼ね合い]等の事情により、家族全員で[別の宗派・宗教]に帰依することとなりました。

[〇〇寺]様には、先祖代々大変お世話になってまいりましたが、家族の信仰の統一を図るため、誠に勝手ながら離檀させていただきたく存じます。

これまでのご恩は決して忘れませんが、家庭の事情をご理解いただけますようお願い申し上げます。

(以下省略)

【特殊型】既に遺骨がない・お墓を使っていない場合

「お墓を建てる予定で区画を借りていたが、結局建てなかった」「長期間お参りしておらず、遺骨もない」といった場合です。簡潔に返還の意思を伝えます。

件名:墓地返還のご連絡

(冒頭省略)

さて、現在お借りしております墓地(区画番号:〇〇)につきまして、長らくお墓を建立できないままとなっており、お寺様には土地を遊ばせてしまい大変申し訳なく存じております。

今後につきましても、建立の目処が立たないため、誠に恐縮ながら、この度墓地を返還(解約)させていただきたく存じます。

つきましては、必要な手続き等をご教示いただきたく、ご連絡申し上げました。

(以下省略)

【代理型】代行業者・行政書士に依頼する場合の添え状

実際の交渉や手続きを「墓じまい代行業者」や「行政書士」に依頼する場合でも、すべてを丸投げするのではなく、施主(あなた)からの手紙を添えることで、住職の心証は全く違ったものになります。

件名:改葬手続きの委任につきまして

拝啓

[時候の挨拶]

(感謝の言葉)

さて、当家のお墓の改葬につきまして、先日よりご相談申し上げておりましたが、私自身、遠方在住かつ高齢のため、複雑な行政手続きや石材店とのやり取りを行うことが体力的に困難でございます。

そこで、誠に失礼とは存じますが、今回の改葬に関する一連の手続きおよび工事の立ち会い等を、専門の行政書士[〇〇 〇〇]へ委任することといたしました。

本来であれば、私が直接足を運び手続きをすべきところ、代理人を立てることとなり大変申し訳ございません。
長年の感謝の気持ちに変わりはございませんので、何卒ご寛容のほどお願い申し上げます。

末筆ながら、貴寺のますますのご隆盛を心よりお祈り申し上げます。

敬具

英文・メールはNG?形式の許容範囲

「海外在住だから英語で書きたい」「メールで済ませたい」という方もいるかもしれません。

注意

  • 英文: 避けるべきです。住職が読めない可能性があるだけでなく、日本の伝統文化であるお墓の話をするのに外国語を使うことは、文化的な挑発と取られかねません。日本語で書くのが鉄則です。
  • メール・LINE: 基本的にNGです。ただし、日頃から住職とLINEでやり取りしているような現代的なお寺であれば、最初のアポイントメントだけ「手紙を送りました」とLINEするのはアリでしょう。しかし、正式な意思表示はやはり「書面(紙)」が最も効力を発揮します。

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※専門家による代行サービスを利用する場合も、手紙のサポートがあるか確認することをお勧めします。

手紙の形式とマナー(文房具・封筒・書き方)

内容は完璧でも、形式がマナー違反だと「非常識な人」というレッテルを貼られ、交渉が不利になります。ここでは、葬送儀礼に関わる独特のルールを解説します。

便箋・封筒の選び方(白無地・和紙がベスト)

  • 便箋: 白の無地、縦書き用の罫線入りを選びます。茶色の紙や、花柄などの派手なデザインは避けてください。高級感のある和紙の便箋(毛筆・ペン字用)が最も好印象です。
  • 封筒: ここが間違いやすいポイントです。
    • 二重封筒(中身が透けないよう内側に紙があるもの): 通常の手紙では丁寧とされますが、葬儀や御香典の場面では「不幸が重なる」として嫌われます。
    • 一重の白封筒: 離檀は弔事(お葬式)そのものではありませんが、仏事に関わることなので、念のため「白の一重封筒(和封筒)」を使うのが最も無難で間違いがありません。茶封筒は事務用品なので失礼にあたります。

筆記具の選び方(薄墨はNG)

  • 薄墨(うすずみ): 香典袋などで使う薄い黒色は「悲しみで墨をする力もない」という意味の弔事用です。離檀の手紙は弔事ではないため、濃い黒を使います。
  • 推奨: 万年筆(黒またはブルーブラック)、毛筆、筆ペン。
  • 許容: 水性ボールペン(黒)。
  • NG: 油性ボールペン(事務的すぎる)、フリクション(消えるペンは公的文書に不可)。

「頭語・結語」と「時候の挨拶」の正しい組み合わせ

手紙の書き出しと結びには決まりがあります。

最も一般的なのは「拝啓(はいけい)」で始まり、「敬具(けいぐ)」で終わる形です。より丁寧にするなら「謹啓(きんけい)」と「敬白(けいはく)」を使います。

【完全保存版】月別・時候の挨拶リスト

手紙の冒頭(拝啓の後)に入れる季節の挨拶です。投函する時期に合わせて選んでください。

上旬 中旬 下旬
1月 初春の候 寒中お見舞い申し上げます 大寒の候
2月 立春の候 梅花の候 解氷の候
3月 早春の候 春分の候 春陽の候
4月 桜花爛漫の候 春暖の候 晩春の候
5月 薫風の候 万緑の候 軽暑の候
6月 入梅の候 長雨の候 向暑の候
7月 小暑の候 猛暑の候 大暑の候
8月 猛暑の候 晩夏の候 処暑の候
9月 初秋の候 爽秋の候 秋分の候
10月 仲秋の候 清秋の候 晩秋の候
11月 暮秋の候 落葉の候 向寒の候
12月 師走の候 歳末の候 年末の候

例文:「拝啓 初春の候、ご住職におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。」

宛名の書き方(住職名がわからない場合)

個人名がわかる場合はフルネームで書きますが、不明な場合や、代替わりしている可能性がある場合は、役職で書きます。

  • 基本: 「〇〇寺 御住職様」
  • 丁寧: 「宗教法人 〇〇寺 住職 〇〇 〇〇様」
  • NG: 「〇〇寺様」(組織宛だと事務的に見えるため、必ず住職個人に宛てる形にする)

手紙の送り方とタイミング

手紙が完成したら、いよいよ投函です。しかし、送るタイミングを間違えると、読んでもらえなかったり、怒らせてしまったりすることがあります。

送ってはいけない「お寺の繁忙期」

お寺には、目が回るほど忙しい時期があります。この時期に面倒な相談事を持ち込むと、対応がおろそかになったり、「忙しいのに!」と感情的になられたりするリスクがあります。以下の時期は避けましょう。

注意

  • お盆(7月・8月): 1年で最も忙しい時期です。特に8月のお盆前後は絶対に避けましょう。
  • お彼岸(3月・9月): 春分・秋分の日の前後1週間。
  • 年末年始(12月〜1月15日頃): 除夜の鐘や初詣、新年の祈祷などで多忙です。

ベストなタイミングは、これらの行事が終わった直後の「閑散期」です。例えば、2月、5月下旬〜6月、10月〜11月などが狙い目です。

郵送方法(普通郵便 vs 簡易書留 vs 特定記録)

「送った」「届いていない」の水掛け論を防ぐため、記録が残る方法が望ましいですが、あまりに仰々しいと警戒されます。

  • 特定記録郵便(推奨): ポストに投函されますが、追跡番号がつきます。相手にハンコを押させる手間がないため、心理的な負担をかけません。
  • 簡易書留: 手渡しで受領印が必要。確実ですが、不在時に再配達の手間をかけさせます。
  • 普通郵便: 追跡できないため、重要な離檀の相談には不向きです。

まずは「特定記録郵便」で送り、届いた頃を見計らって電話をするのがスマートです。

お礼の品(菓子折り・お歳暮)は同封すべき?

手紙と一緒に菓子折りを送るべきか悩む方もいますが、初回の手紙には同封しないのが一般的です。

理由は2つあります。

  1. 手紙(信書)と荷物を一緒に送るのは郵便法上の制約がある(レターパック等を除く)。
  2. 「物で釣ろうとしている」と誤解される恐れがある。

菓子折りや「御挨拶」としてのお金(数千円程度の菓子折り代など)は、後日、直接お寺を訪問して話し合いをする際に持参するのが最も効果的です。遠方でどうしても行けない場合は、話し合いがある程度進んだ段階で、お中元・お歳暮として送るのが自然です。

手紙投函後の「フォロー電話」の重要性

手紙を投函して終わりではありません。投函から2〜3日後(到着したと思われる頃)に、必ず電話を入れてください。

「先日、お手紙を送らせていただきました〇〇ですが、無事に届いておりますでしょうか?
つきましては、お手紙の内容について、一度直接お話しさせていただきたいのですが…」

この電話が、具体的な面談日程を決めるためのスムーズな入り口となります。

こんな時どうする?手紙に関するトラブル・Q&A

手紙を出したものの、想定外の反応が返ってくることもあります。よくあるトラブルと対処法をまとめました。

手紙を送っても返事がない・無視された場合

お寺は一般企業と違い、事務処理が遅いことも多々あります。
まずは2週間待ってください。それでも連絡がない場合は、こちらから電話をします。

「お忙しい中、急かすようで申し訳ございません。先日お送りしたお手紙の件ですが…」

と低姿勢で切り出しましょう。「無視ですか?」と問い詰めるのは禁物です。郵便事故の可能性もあるため、「届いていますか?」という確認から入ります。

手紙の内容について「直接来い」と呼び出された場合

これはチャンスです。「話を聞く」という意思表示だからです。
可能な限り、夫婦や親族と2人以上で訪問しましょう(1人だと威圧される可能性があるため)。

どうしても「怖くて行けない」「体調が悪い」場合は、その旨を正直に伝え、代理人(行政書士や代行業者)を立てることを検討してください。「体調が悪く、主治医から長距離移動を止められている」といった理由は、正当な断る理由になります。

離檀料(お布施)の金額を手紙に書いてもいい?

原則として、具体的な金額(特に低い金額)を書くのは避けるべきです。
「3万円しか払えません」と書くと、相手のプライドを傷つけます。
まずは「経済的に厳しい」という状況だけを伝え、金額については

「本来はおいくらほどお包みすべきものでしょうか」

と、後の話し合いで尋ねる形(または電話で尋ねる)にします。その上で「実はその金額は難しく…」と交渉する方が、角が立ちません。

「離檀届(事務書類)」と「挨拶状(手紙)」の違い

  • 挨拶状(手紙): 今回解説している、あなたの気持ちを伝える私信。
  • 離檀届: お寺側が用意している、離檀処理のための公式書類。

お寺によっては、挨拶状を送った後に「では、この用紙に書いて送り返してください」と離檀届が送られてくることがあります。
逆に、自作の離檀届を挨拶状と一緒に送るのは、「一方的すぎる」と思われるため避けましょう。あくまで、相手の指示を待つのがマナーです。

絶縁覚悟の「内容証明郵便」を使う最終手段

話し合いが完全に決裂し、「法外な離檀料を払わないと埋葬証明書を出さない」と脅されたり、暴言を吐かれたりした場合の最終手段です。

「内容証明郵便」を送ると、法的な宣戦布告となり、円満な離檀は不可能になります。しかし、行政手続き(役所への改葬許可申請)において、「お寺と揉めていて署名がもらえない」ことを証明する資料として使える場合があります。

これを使う段階になったら、個人の手には負えません。弁護士や行政書士に依頼することをお勧めします。

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※トラブル対応に強い専門家に相談することで、精神的な負担を大幅に減らせます。

よくある質問(知恵袋・相談サイトより)

Q. 離檀の理由は「一身上の都合」で誤魔化してもいい?

A. お勧めしません。

退職届のような「一身上の都合」という言葉は、お寺との関係においては「理由を言いたくない(やましいことがある)」と受け取られ、不信感を招きます。「高齢で」「遠方で」といった、相手が納得しやすい理由を具体的に伝える方がスムーズです。嘘をつく必要はありませんが、オブラートに包む(例:お寺が嫌い→経済的に厳しい)工夫は必要です。

Q. 亡くなった親が檀家だっただけで、私は信徒ではないのですが?

A. 形式上は丁重に扱うべきです。

あなた自身に信仰心がなくても、お墓の名義人(祭祀承継者)になった時点で、お寺との契約当事者となります。「私は信じていないから関係ない」という態度は、契約トラブルの元です。あくまで「先祖がお世話になった」というスタンスで、大人の対応をして関係を終了させましょう。

Q. 離檀料が高すぎて払えないと手紙で伝えてもいい?

A. 「相談」という形で書きましょう。

「払えません」と拒絶するのではなく、「生活が苦しく、ご提示額を用意するのが困難です。〇〇万円程度にお納めさせていただけないでしょうか」と、減額をお願いする文面(前述の例文参照)にします。文書に残すと証拠になるため、あまりに具体的な交渉は電話か面談で行うのがベターです。

Q. 寺院墓地ではなく民間霊園でもこの手紙は必要?

A. 民間霊園の場合は不要なことが多いです。

民間霊園は、宗教法人ではなく管理事務所が運営しているケースが大半です。その場合、事務的な「解約届」だけで済むことがほとんどです。ただし、霊園内にお寺の施設があり、特定の住職にお世話になっている場合は、一筆書くのがマナーです。

Q. 浄土真宗など、宗派によって手紙の書き方は違う?

A. 用語に注意が必要です。

基本的な構成は同じですが、宗派によって使ってはいけない言葉があります。

  • 浄土真宗: 「冥福(めいふく)」「霊前(れいぜん)」は使いません(霊魂の存在を否定するため)。代わりに「哀悼」「御仏前」などを使います。また、亡くなることを「還浄(げんじょう)」と言ったりします。

あまり神経質になる必要はありませんが、「御住職様」という敬称や感謝の気持ちは全宗派共通です。

まとめ

離檀の手紙は、単なる事務連絡ではありません。それは、これまでご先祖様を守ってくれたお寺への感謝を伝え、これから新しい場所へ移るための「けじめ」の儀式でもあります。

最後に、アクションプランを整理します。

step
1
親族への電話

「お寺に手紙を出そうと思う」と最終確認をする。

step
2
テンプレート選択

この記事の例文から、自分の状況に近いものを選ぶ。

step
3
下書きと清書

白い便箋に、丁寧な字で(上手くなくてもOK)清書する。

step
4
投函

特定記録郵便で送り、3日後にフォローの電話を入れる。

「手紙を書く」という行動は、勇気がいるかもしれません。しかし、この一通の手紙が、あなたの誠意を住職に伝え、トラブルという大きな波を防ぐ防波堤になります。

ご先祖様も、あなたが悩み苦しむことより、平穏な気持ちで供養してくれることを望んでいるはずです。まずは机に向かい、最初の一行を書き出すことから始めてみてください。

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※墓じまい後の供養先(永代供養など)が決まっていない場合は、大手の資料請求で相場を知ることから始めましょう。

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